もしかして、と思ったら
あわてて決めつけなくて、大丈夫です。
まだ「認知症かどうか」を決める必要はありません。「もしかして」と感じた今このときが、いちばん早く動ける時期です。ここにあるのは、一人で抱え込まないための"相談の入口"です。できそうなことから、一つずつで大丈夫です。
まず地域包括支援センターに電話してみる
「認知症かどうか分からない」段階でも大丈夫です。地域包括支援センターは、市区町村ごとにある高齢者のための総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどが対応します。相談は無料で、「親の様子が少し気になっていて」という話から始められます。何をどう話せばいいか分からなくても、状況を整理する手伝いをしてくれる相談先です。まずここに一本電話を入れるだけで、この先の道筋が見えやすくなります。
かかりつけ医に「気になること」を相談する
いきなり専門の外来へ、と身構えなくても大丈夫です。親御さんが普段かかっている医師(かかりつけ医)がいれば、まずそこで「最近こんな様子が気になる」と相談してみる方法があります。日ごろの体の状態を知っている医師なら、次にどこへ相談すればよいか道筋を示してくれることがあります。ここでは症状の見立てを家族が判断する必要はありません。「気になっている」と伝えるだけで十分です。
家族に「気になっている」ことをそっと共有する
一人で気づき、一人で抱えてしまいがちな時期です。今日のところは、きょうだいや配偶者など身近な家族に「最近ちょっと気になっていて」と共有するだけで十分です。誰かに口に出すだけで、気持ちが少し軽くなり、この先「誰がどう関わるか」を相談しながら進められるようになります。細かい役割まで決めきらなくて大丈夫。まず一人にしないことが、家族全体を守ることにつながります。
「家族の負担」を一度ことばにしてみる
気づいた人ほど、知らないうちに負担が偏っていきます。今の状況を家族だけで抱え込まないために、いま自分や家族にどれくらいの負担がかかっているかを、一度ことばにして見つめてみるのもひとつの方法です。負担の重さが見えると、「どこを誰かに頼るか」「どの制度に相談するか」が考えやすくなります。頑張りを採点するためではなく、一人に偏らせないための整理です。
専門の相談・受診につなぐことを考える
気になる様子が続くようなら、専門の医療につなぐことも選択肢に入ってきます。地域には「認知症疾患医療センター」など、専門的な相談や検査に対応する医療機関があり、かかりつけ医や地域包括支援センターから、どこへ相談すればよいか案内してもらえます。「もの忘れ外来」といった窓口を設けている医療機関もあります。ここでの家族の役割は、症状を自分で判断することではなく、「相談先につなぐ」ことです。早めに相談しておくと、この先の選択肢が広がります。
「認知症初期集中支援チーム」という支えがあると知っておく
どこに相談しても話が前に進まない、本人が受診をいやがる——そんなときの支えとして「認知症初期集中支援チーム」があります。これは、医療・介護の専門職が家庭を訪問し、初期の相談や、医療・介護サービスにつなぐ手伝いを、一定期間まとめて行う仕組みです。地域包括支援センターなどに置かれていることが多く、まずはそこへ「初期集中支援チームに相談できますか」と聞いてみるのが入口になります。家族だけで抱え込まなくてよい、と知っておくだけでも心強い制度です。
要介護認定(要支援を含む)の申請を検討する
まだ介護というほどでは、と感じても、デイサービスなどの介護保険サービスを使うには「要介護認定(要支援を含む、状態の判定)」が必要になります。申請は市区町村の窓口へ。認定には日数がかかるため、サービスを使う可能性が少しでもあるなら、早めに申請しておくと落ち着いて準備できます。どう申請すればよいか分からないときは、地域包括支援センターが手伝ってくれます。
介護保険サービス(デイサービス等)の入口を知っておく
要介護認定を受けると、デイサービス(日帰りで通う施設)やホームヘルプ(訪問介護)などの介護保険サービスが使えるようになる場合があります。本人が家に閉じこもりがちになるのを防いだり、家族が少し休む時間をつくったりする助けになります。どのサービスが合うかは、ケアマネジャー(介護支援専門員)や地域包括支援センターに相談しながら決められます。まずは「こういう選択肢がある」と知っておくだけで十分です。
お金まわり(通帳・契約)のありかを、そっと把握しておく
これは、いざというときに家族が困らないための、静かな準備です。判断が難しくなってくると、通帳・印鑑・保険・公共料金やサブスクの契約などが分からなくなり、家族が後で探し回ることがあります。今のうちに、本人の気持ちを尊重しながら「どの銀行を使っているか」「どんな契約があるか」のありかだけでも、そっと把握しておくと安心です。本人に代わって勝手に手続きするのではなく、あくまで場所を知っておく、という段階です。
運転免許のことを、公式の情報をもとに考える
運転を続けるかどうかは、本人の暮らしにも関わるデリケートな話題です。75歳以上の方の免許更新では認知機能検査などが定められており、制度の内容は警察庁の公式ページで確認できます。運転をしないので免許を返したいという場合は、自主返納の手続きがあり、返納後は「運転経歴証明書」が身分証明書として使えたり、地域によって公共交通機関の割引などの特典を受けられたりします。急いで結論を出すことではありませんが、公式の情報を知っておくと、本人と落ち着いて話し合いやすくなります。
【情報提供】判断が難しくなったときの制度を知っておく(成年後見制度)
これは今すぐ何かをする項目ではなく、「こういう制度がある」と知っておくための情報提供です。判断能力が十分でなくなったとき、本人の財産や契約などを法的に支える仕組みとして、成年後見制度があります。判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の区分があり、詳しい内容や手続きは法務省・裁判所の公式ページで確認できます。利用するかどうかは状況によって大きく異なり、専門的な判断を要するため、必要が見えてきたら地域包括支援センターや公的な相談窓口に相談するのが安心です。
【情報提供】日常のお金の管理を手伝ってもらえる仕組みを知っておく
これも、知っておくための情報提供です。判断能力が不十分な方が地域で安心して暮らせるよう、社会福祉協議会が本人との契約にもとづいて、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理、書類の預かりなどを手伝う「日常生活自立支援事業」という仕組みがあります。実施しているのは各地の社会福祉協議会です。成年後見制度とは目的や対象が異なるので、どちらが合うかを含め、まずは地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談してみるのがよい入口です。
大事な判断は、一人で決めない・抱え込まない
この先には、受診のこと、お金のこと、暮らし方のことなど、家族が判断を迫られる場面が出てくるかもしれません。そのとき、どれか一つでも「自分一人で決めなきゃ」と思い込まないでください。地域包括支援センター、ケアマネジャー、家族——相談できる相手は必ずいます。役割を家族で少しずつ分け合い、迷ったら公的な相談先を頼る。それが、本人にとっても家族にとっても、長く続けられる関わり方になります。
「まず地域包括支援センターに電話してみる」ところから、という方へ。お住まいの区の窓口を探すと、住所と電話番号がすぐに見つかります。
すでに入院や急な変化が起きているときは、今日やることリストもあわせてご覧ください。介護を続けるなかでの、あなた自身の負担が気になるときは、介護負担スコア(無料診断)で立ち止まってみるのもひとつです。