「最近、同じことを何度も聞く」「約束を忘れることが増えた」。親のそんな様子に気づいて、「認知症かもしれない」と検索されたのだと思います。まだはっきりしたことは何も分からない——その手前の、もやもやとした不安のなかにいる方も多いはずです。まずお伝えしたいのは、いま何かを決めなくて大丈夫だということです。

この記事では、三つのことをお伝えします。ひとつは、気づきのサインを「あくまできっかけ」として整理する見方。ひとつは、本人を傷つけないための接し方。そしてもうひとつは、はっきりする前でも使える最初の相談先です。認知症かどうかを判断するのは医療機関の役目なので、この記事で決めつけることはしません。

まず、本人も家族も責めないこと

「何度言えば分かるの」と言いたくなったり、逆に「気のせいだと思いたい」と目をそらしたくなったり。どちらの気持ちも、ごく自然なものです。変化に最初に戸惑うのは、たいてい本人自身です。うまくできなくなっていることに、いちばん不安を感じているのは、ご本人かもしれません。

だからこそ、問い詰めたり、間違いをその場で正したりすることは、いったん脇に置いてかまいません。「気づいてしまった」ことを、責める材料ではなく、そっと備えを始めるきっかけに変えていければ十分です。

気づきのサイン——ただし「サインがある=認知症」ではありません

次のような変化は、周りが気づきやすいものとしてよく挙げられます。ただし、これらは年齢を重ねたことによる物忘れでも起こります。あてはまるからといって認知症だと決まるわけではありません。あくまで「一度、相談してみようか」と考えるためのきっかけとして眺めてください。

  • 同じことを何度も聞く・話す
  • しまい忘れ、置き忘れが増え、探し物が多くなる
  • 日付や曜日、約束があいまいになる
  • 料理・買い物・お金の管理など、段取りのいる作業が難しくなる
  • 外出や趣味への意欲が減り、気分の浮き沈みが目立つ
  • 慣れた道で迷う、同じものを何度も買ってくる
※ ご案内についてここに挙げたのは目安であり、セルフチェックや診断ではありません。加齢による物忘れとの違いや、認知症かどうかの判断は、医療機関でしか行えません。気づきは「相談のきっかけ」にとどめ、断定しないことが、本人にとっても家族にとっても楽になります。

本人を傷つけない接し方の、三つの基本

① 否定や訂正を、急がない

間違いをその都度正されると、本人は自信を失い、かえって不安が強くなることがあります。事実の訂正よりも、まず「そうだったね」と受けとめる。安心できる空気のほうが、暮らしを穏やかに保ってくれます。

② 「できないこと」より「できること」に目を向ける

できなくなったことを数えると、本人も家族も苦しくなります。まだできること、続けられることに目を向けると、任せられる役割が見つかり、本人の張り合いにもつながります。

③ 家族だけで抱え込まない

いちばん避けたいのは、家族だけで長く抱え込んでしまうことです。早めに外の窓口とつながっておくと、いざというときの選択肢が広がります。次にお伝えする相談先は、はっきりする前の段階から使えます。

はっきりする前でも使える、最初の相談先

地域包括支援センター(無料・診断の前から)

地域包括支援センター(=市区町村ごとにある高齢者のための総合相談窓口)は、認知症が疑わしいという段階から相談できる場所です。相談は無料で、「まだ受診もしていないのですが」という状態のまま、まず電話一本でかまいません。保健師や社会福祉士などが、これからどう動けばよいかを一緒に整理してくれます。厚生労働省も、市町村ごとの相談・サービスの入手先として、地域包括支援センターを案内しています。

お住まいの地域の窓口は、地域包括支援センターを探すから、住所と電話番号で確認できます。

認知症施策(相談先・認知症ケアパスの案内/厚生労働省)

かかりつけ医・もの忘れ外来(診断が必要になったとき)

受診を考える段になったら、まずは日ごろの様子を知っているかかりつけ医に相談するのがひとつの入口です。「何科に行けばいいか分からない」というときも、かかりつけ医や地域包括支援センターに尋ねれば、適切な相談先の見当をつける手助けをしてくれます。無理にご本人を説得して急いで受診させる必要はありません。本人が受け入れやすいタイミングを、窓口と相談しながら計ることができます。

地域包括支援センター・地域包括ケアシステム(厚生労働省)

この先の備えは、少しずつで大丈夫

認知症かどうかがはっきりしていく過程では、介護保険の要介護認定や、お金の管理の準備など、考えることが少しずつ増えていきます。ただ、それらを今日いっぺんに片づける必要はありません。まずは相談先とつながること。次の一歩は、そこから一緒に決めていけます。

「親が倒れたその日から」何をそろえればいいかを段取りにした介護のそなえチェックリストも、落ち着いて見直したいときの手がかりにご利用ください。

気づいたあなた自身の気持ちも、置き去りにしないで

親の変化に最初に気づくのは、たいてい近くで支えている家族です。その気づきには、不安や戸惑い、これからへの重さがついてまわります。本人を気づかうのと同じくらい、気づいたあなた自身の気持ちも、どうか置き去りにしないでください。

しんどさが積もっていると感じたら、介護に疲れたと感じたらもあわせてご覧ください。負担を数字で眺める無料の診断もご案内しています。

※ ご案内についてこの記事は、認知症かどうかを判定したり、診断・治療の内容をお伝えするものではありません。気づきを相談につなげるための入口として整理したものです。ご本人の様子が心配なときは、地域包括支援センターや医療機関にご相談ください。