親の介護が急に始まると、「このまま仕事を続けられるのだろうか」「いっそ辞めたほうがいいのでは」という考えが、頭をよぎることがあります。通院の付き添い、施設や役所とのやりとり、日々の連絡——働きながらこなすには重すぎるように感じられて、当然だと思います。まずお伝えしたいのは、辞めるという結論を、今日出す必要はないということです。

じつは法律には、仕事と介護を両立するための仕組みがいくつも用意されています。「そんな制度があるとは知らなかった」というまま離職してしまう方も少なくありません。この記事では、辞めるかどうかを決める前に知っておきたい制度の全体像を、落ち着いてご案内します。

まず、「辞める」を最後の選択肢に置く

介護を理由に仕事を辞めることを、介護離職といいます。目の前がいっぱいになると、辞めれば楽になるように思えます。けれど、収入が途切れることや、介護がひと段落したあとの再就職の難しさなど、あとから重くのしかかるものもあります。

だからこそ、まずは辞めずに乗り切る方法がないかを見てから、それでも難しいときに次を考える——その順番でも遅くありません。国も、介護離職を防ぐために両立支援の制度を整えています。次の章から、その中身を一つずつ見ていきます。

両立支援制度の全体像——五つの柱

育児・介護休業法という法律には、働きながら介護をする人を支えるための制度が定められています。大きく分けると、次の五つの柱があります。まずは「こういう仕組みがあるのだ」と全体像をつかむだけで十分です。

  • 介護休業——まとまった期間を休んで、介護の体制づくりに充てる
  • 介護休暇——通院の付き添いなどで、一日単位・時間単位で休む
  • 所定外労働(残業)・時間外労働・深夜業の制限——働く時間を軽くする
  • 短時間勤務など(勤務時間の短縮・時差出勤・フレックスなど)の措置
  • テレワーク(在宅勤務)——働く場所を柔軟にする取り組み
※ ご案内についてここに挙げた日数や回数は、いずれも法律で定められた「目安」です。実際にどう使えるか、勤め先の就業規則でどこまで手厚くなっているかは会社ごとに異なる場合があります。数字は目安としてつかみ、具体的な運用は勤め先の担当窓口でご確認ください。

介護休業——体制づくりのためのまとまった休み

介護休業は、家族の介護のために、まとまった期間を休める制度です。対象となる家族一人につき、通算して93日まで取得できるのが目安とされています。しかも一度に使い切る必要はなく、3回まで分けて取れる場合があります。

ここで大切なのは、介護休業は「家族が自分で介護に専念するための休み」というより、ケアマネジャーを決めたり、施設やサービスを探したり、これからの体制を整えるための時間として使うと活きる、という考え方です。休みのあいだに段取りを組んでおくと、復帰後に働きながら続けやすくなります。

なお、介護休業を取得した期間は、一定の条件を満たすと雇用保険から介護休業給付金が受け取れる場合があります。休んでいるあいだの収入の不安をやわらげる仕組みなので、あわせて知っておくと安心です。

給付の対象や受け取れる額の目安については、介護休業給付金のしくみで、別途くわしくご案内しています。

介護休暇・労働時間の制限——日々を回すための仕組み

介護休暇(通院付き添いなどに、一日・時間単位で)

介護休暇は、通院の付き添いや、ケアマネジャーとの打ち合わせなど、短い用事のために取れる休みです。対象家族が一人なら年5日まで、二人以上なら年10日までが目安とされています。一日単位だけでなく、時間単位で取れる場合もあり、「午前だけ休んで付き添う」といった使い方ができます。

残業・時間外・深夜業の制限、短時間勤務など

介護をしながら働く人は、申し出ることで、所定外労働(残業)の免除を受けられる場合があります。さらに、時間外労働や深夜業に一定の上限を設ける制度もあります。加えて、勤務時間を短くする短時間勤務、時差出勤、フレックスタイムといった措置のいずれかを、会社が用意することになっています。「フルタイムのままでは難しいけれど、辞めるほどでもない」という中間の選択肢が、ここにあります。

テレワーク(在宅勤務)

近年は、介護と両立しやすいようにテレワークを取り入れる動きも広がっています。通勤の時間や負担が減るだけでも、日々の余白は変わってきます。勤め先で在宅勤務が使えるかどうか、一度たずねてみる価値はあります。

※ ご案内について制度の適用には、勤続期間や労使協定による例外など、いくつかの条件がある場合があります。ここでの説明は全体像をつかむためのものです。ご自身が使えるかどうかは、勤め先の人事・総務の担当窓口で確認するのが確実です。

まず相談したい、二つの窓口

勤め先の人事・総務(会社の制度を使うために)

これらの制度を実際に使うには、勤め先に申し出ることが入口になります。「介護のことで相談したい」と切り出すのは勇気がいるかもしれませんが、多くの会社には就業規則や相談窓口が用意されています。まずは、どんな制度が使えるか、いつまでに何を伝えればよいかを、担当窓口で確認するところから始められます。早めに共有しておくほど、勤め先も対応の見通しを立てやすくなります。

地域包括支援センター(介護そのものの段取りを整えるために)

仕事の側を整えるのと並行して、介護そのものの体制づくりも欠かせません。地域包括支援センター(=市区町村ごとにある高齢者のための総合相談窓口)は、要介護認定の受け方や、使えるサービスの見当を、無料で一緒に整理してくれる場所です。ここで介護の段取りがつくと、仕事との両立もぐっと現実的になります。

お住まいの地域の窓口は、地域包括支援センターを探すから、住所と電話番号で確認できます。

仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~(厚生労働省)育児・介護休業法について(両立支援制度の解説/厚生労働省)

この先の段取りも、少しずつで大丈夫

制度の全体像が見えてくると、「では何から手をつければいいのか」という段取りの問いが次にやってきます。ただ、それらを今日いっぺんに片づける必要はありません。まずは相談窓口とつながり、使える制度を一つずつ確かめていく——その積み重ねで十分です。

「親が倒れたその日から」何をそろえればいいかを順番に整理した介護のそなえチェックリストも、落ち着いて全体を見渡したいときの手がかりにご利用ください。

あなた自身が続けられることも、両立の一部です

仕事と介護の両立というと、どうしても親の側の段取りに目が向きます。けれど、支える側であるあなたが無理を重ねて倒れてしまっては、両立そのものが立ちゆかなくなります。制度を使って負担を軽くすることは、わがままではなく、長く続けるための大切な備えです。

しんどさが積もっていると感じたら、介護に疲れたと感じたらもあわせてご覧ください。負担を数字で眺める無料の診断もご案内しています。

※ ご案内についてこの記事は、制度の全体像をつかむための入口として整理したものです。日数・回数などは目安であり、適用の条件や最新の内容は変わる場合があります。実際にどの制度をどう使えるかは、勤め先の担当窓口や公式情報でご確認のうえ、無理のない形で進めてください。