入院していた親の退院が見えてきて、これから家で介護を受け入れることになった——。「何から手をつければいいのか」「家の準備が間に合うのか」と、退院日を前に気持ちがざわつく方は多いと思います。まずお伝えしたいのは、退院後の在宅介護は、いくつもの用意すべきことを一度にそろえる必要はない、ということです。順番があり、支えてくれる人がいます。

この記事では、退院が決まってから家で無理なく迎えるまでの段取りを、大きく五つに分けて整理します。「退院前の情報共有」「要介護認定とケアプラン」「住まいの準備」「サービスの組み立て」、そして「介護する家族が抱え込まないこと」です。ひとつずつ見ていけば大丈夫です。

まず、退院前カンファレンスで情報を共有する

在宅介護の準備は、退院してからではなく、入院中から始められます。その入口になるのが退院前カンファレンス(=退院を前に、病院の医師・看護師・退院支援の担当者と、本人・家族、そして在宅側の関係者が集まって情報を共有する話し合い)です。退院後にどんな支えが必要になりそうか、家での暮らしで気をつけたいことは何かを、この場でまとめて聞いておけると、その後の段取りがぐっと立てやすくなります。

「専門的な場に家族が入っていいのだろうか」と気後れする必要はありません。ふだんの暮らしや家の間取りを知っているのは家族です。気になっていることや不安は、遠慮なく持ち込んでかまいません。まだ担当のケアマネジャーが決まっていない段階でも、病院の退院支援の窓口(地域連携室・医療相談室など)に声をかければ、話し合いの調整を手伝ってもらえます。

退院前カンファレンスで何を聞き、どう準備すればよいかは、退院前カンファレンスの進め方であらためて整理しています。あわせてご覧ください。

要介護認定を受け、ケアマネジャーとケアプランを立てる

在宅で介護保険のサービス(訪問介護や通所、福祉用具のレンタルなど)を使うには、市区町村の要介護認定を受けることが入口になります。まだ申請していない場合は、入院中から準備を始められます。申請の窓口は市区町村の介護保険担当課や地域包括支援センターで、申請そのものに費用はかかりません。

認定の見込みや区分に応じて、ケアマネジャー(介護支援専門員)が、本人や家族の希望を聞きながらケアプラン(どのサービスを、どのくらい使うかの計画)を組み立ててくれます。退院日に合わせてサービスが始められるよう、認定の結果を待つ前から相談を進められる場合もあります。段取りに迷ったら、まずケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するのがひとつの近道です。

認定の申請から結果が出るまでの流れは、要介護認定の申請と流れで、手続きの順にまとめています。

介護保険制度の概要(要介護認定・サービス利用の流れ/厚生労働省)

住まいを整える——手すり・福祉用具・住宅改修

退院後に本人が安心して過ごせるよう、住まいの側も少しずつ整えていきます。すべてを退院日までに完璧にする必要はありません。まずは移動や立ち座り、トイレ・入浴といった、暮らしのなかで負担や転倒の心配が大きいところから見ていくと考えやすくなります。

  • 玄関・廊下・階段・トイレ・浴室などへの手すりの取り付け
  • 段差の解消や、すべりにくい床材への変更
  • 介護ベッド・車いす・歩行器などの福祉用具のレンタル
  • 入浴用のいすやポータブルトイレなど、購入で用意する用具
  • 暮らしの動線に合わせた家具の配置替え

手すりの取り付けや段差の解消といった住宅改修、福祉用具のレンタルや購入は、要介護認定を受けていれば介護保険の対象になる場合があります。対象になる範囲や支給の上限は制度で定められており、内容によって条件が異なります。どこまでが対象か、どう申請すればよいかは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに確認しながら進めると安心です。

どんな福祉用具がレンタルでき、住宅改修がどう使えるかは、福祉用具のレンタルと住宅改修でくわしくご案内しています。

サービスを組み立てる——訪問・通所・レンタルの分担

在宅介護は、家族だけで全部を担うものではありません。訪問や通所のサービスを組み合わせることで、本人の暮らしを支えながら、家族の負担が一点に集中しないようにできます。次のような選択肢を、ケアプランのなかで組み合わせていくことになります。

  • 訪問介護(ホームヘルパーが自宅を訪ね、食事・入浴・排せつなどを手伝う)
  • 訪問看護(看護師が自宅を訪ね、健康状態の確認や医療的なケアを行う)
  • 通所介護・通所リハビリ(日帰りで施設に通い、入浴や機能訓練などを受ける)
  • 福祉用具のレンタルや購入で、暮らしの動作を支える
  • 短期入所(ショートステイ)で、家族が休める時間をつくる

どれをどのくらい使うかは、本人の状態や家族の暮らし方によって変わります。最初から完成した形を目指さなくてかまいません。実際に暮らしてみて、「ここが大変」「ここは手が回る」と分かってきたら、ケアマネジャーと相談してプランを見直していけます。始めてみて、少しずつ整えていく——それで十分です。

お住まいの地域の相談窓口は、地域包括支援センターを探すから、住所と電話番号で確認できます。認定の前でも相談できます。

地域包括ケアシステム・地域包括支援センター(厚生労働省)

介護する家族が、抱え込まないために

退院後の暮らしが始まると、はじめのうちは慣れないことが続き、気を張る場面も多いはずです。だからこそ、家族がひとりで全部を引き受けようとしないことが、長く支えていくうえで大切になります。サービスを使うのは、頼りないことでも、手を抜くことでもありません。本人の暮らしと家族の暮らしの両方を守るための、当たり前の備えです。

「これくらい自分でやらなければ」と思いすぎると、疲れが積もっていることに自分では気づきにくくなります。困りごとが出てきたら、ためこまずにケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してかまいません。次の一手は、そこから一緒に考えていけます。

退院後に何をそろえればよいかを段取りにした介護のそなえチェックリストも、落ち着いて準備を進めたいときの手がかりにご利用ください。

※ ご案内についてこの記事は、退院が決まってからの在宅介護の段取りを整理したもので、退院してよいかどうかや、在宅で診るべきかどうかといった医療上の判断をお伝えするものではありません。本人の状態や治療・リハビリに関することは、主治医や病院の退院支援の担当者にご相談ください。制度の対象範囲や金額は目安であり、内容や時期によって異なる場合があります。最新の取り扱いは、お住まいの市区町村や地域包括支援センターでご確認ください。